目の前の誰かを助け合える やさしい社会を目指して

今日は目の前で困っている人を支援する「アクティブ・バイスタンダー(行動する第三者)」について書いてみたいと思います。

 

日本は「人助け指数」で世界最下位

イギリスのチャリティ援助財団(Charities Aid Foundation、CAF)が世界114ヵ国を対象に調査・発表した"CAF World Giving Index 2021”(世界人助け指数)というデータがあります。

 

助け合い指数または寄付指数とも呼ばれるこのデータ、過去1ヶ月間に「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアをしたか」という3つの観点から、各国の寛容度についてまとめたものです。

 

日本は「おもてなし」が得意な国としてオリンピック招致の際にもアピールしてきました。

しかし、実は「人助け指数」に見られるように、特に知らない人に対する支援や寛容度は世界でも最低水準を記録しているのです。

 

日本は他人に無関心な冷たい社会なのか

日本は1990年代初頭のバブル崩壊後、生産性や効率性の観点からコスト削減を重視する傾向が続いています。
売上高が伸びにくい中で人件費や研究開発費、設備投資などを削ることで利益を確保する企業も多くみられます。
その結果、過去30年の平均賃金はほぼ横ばいで、先進主要国の中でも最低水準となっています。
コロナ禍も重なり、人々の心に以前ほどの余裕がなくなってきている可能性があります。


世の中には、困っているのは自分の責任、出来ないのは努力が足りないから、というネオリベラリズム(新自由主義)的な考え方をされる方もいらっしゃいます。
収入の多寡で人に優劣をつけたり、子供の有無で生産性を語る方もいらっしゃいます。
SNSなどが発達するなかで、優生思想的な言説が社会的弱者の排除しようとする動きに危機感を感じています。

日本は本当に生きにくい社会になってしまったのか --- 悲しくなってしまう時もありましたが、実は希望を捨てたわけではありません。

やさしい社会を目指す仲間は存在している

現在、共同代表をつとめるジェンダー総合研究所では、「行動するためのバイスタンダー・ワークショップ~困っている誰かのために今すぐできる5つの方法」を開催しています。

 

たくさんの皆さまにご参加いただき、困っている誰かのために行動したいと思う方がたくさんいらっしゃることを確認させていただきました。

本当に心強く感じるとともに、今後に希望を頂いているところです。

 

CAFの調査によると、日本でこの1ヶ月間に人助けをしなかったと回答した方の75.2%が「そのような場面に出合わなかった」ためと回答しています。

困っている人がいない可能性も勿論ありますが、困っている人に気づいていなかった可能性もありそうです。

更には、本当に支援を必要としているのか分からず躊躇してしまったり、支援を断られる経験をしたことでそれ以降は声掛けしにくくなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。

 

大切なのは「知る→分かる→行動できる」という流れ

何事もそうですが、大切なのは知識と実践の組み合わであると考えます。

行動するバイスタンダー・ワークショップにおいても、まずは知識を得てから、言葉にして話し合い、練習を通じて行動できるようになることを目指しています。

地震や火事などの災害発生時にどのように避難すべきかは、事前に備えて防災訓練に参加することでスムーズに行動できるようになります。

AED講習に参加していたら、目の前で倒れて心臓をおさえている人に対して迅速に救急対応できることになるでしょう。

バイスタンダー・ワークショップでも同様の効果を目指しています。

知識を得て本当の意味で理解し、行動できることを目標としているのです。

 

目の前で困っている人のために何もできずに後悔することのないように。

誰かのために行動したい人たちとつながり、様々なアイデアをシェアできるように。

そうした一人ひとりの行動がやさしい社会につながっていくように。

やさしい社会の実現を心から願い、活動を続けています。