心にたっぷりのスペースを。

飛行機に乗ると流れてくるアナウンス。「急激な機内の気圧変動の際には、酸素マスクが天井から落ちてきます。小さなお子様のいらっしゃる方は、お子様のマスクをつける前にご自分のマスクを先に装着してください。」

 

初めて聞いた時は、

「え?子供が先じゃないの??」と驚いた。しかし、よくよく考えてみると、確かに理にかなっている。急激に気圧が変わると短時間のうちの意識を失う可能性がある。素早く大人が自分の安全を確保してから、子供を助けることで、2人とも助かる確率が格段に上がるのだ。

 

翻って、普段の生活のお話。人は誰かをサポートする立場にある時、なんとか相手の役に立ちたい、喜んで欲しい、と思うもの。何等かの方法で自分が役立てれば、誰だって嬉しい。相手が大切な人であれば尚更である。

 

しかし、プロコーチとしては、直接的にアドバイスをしたり、その場で何等かの答えを出すことが重要であるとは考えていない。それらは、その場の満足度を上げるかもしれないが、必ずしも、クライアントさんが根源的な変容を遂げるためには十分ではないからだ。大切なのは、クライアントさん自身が自分と向き合い、自らの願いや思いに気付くこと。そのうえで、アクションを起こすことなのだ。

 

コーチとして大切にしているのは、クライアントさんを信頼して、彼(彼女)の中にある、まだ見ぬ思いを一緒に探し出すこと。クライアントさんの願いをしっかりと聞き届けること。そして、伴走しながら、アクションを起こすための勇気を奮いおこすお手伝いをすること。クライアントさんに、セッション以外のふとした瞬間に、「私はこうしたかったんだ」「ここが気になっていたんだ、その理由はこういうことだったのか!」といった気付きを得てもらうこと。コーチから答えを提示することでは、決してない。信頼して、クライアントさんの願いが泉のように湧き出るようにサポートしていくことなのだ。

 

これは、コーチだけに求められる資質では決してない。親子や上司・部下といった関係においても当てはまるだろう。信頼して、任せる。信頼して、任せる。困ったら、サポートする。決して、自分を犠牲にして、相手のためにつくすのではない。鶴の恩返しのように、自分の一部を削りながら、子供や部下やクライアントさんに与えていくのではない。(早晩、限界が来ちゃいますから ^^;)

 

大切なのはまず、自分の心にたっぷりのスペースを用意すること。エネルギーをどんどん満たしていくこと。気持ちのいいこと、ときめくモノたちに囲まれて、楽しみながら、心にスペースを作っていくこと。ちょっとした不運や誰かの心無い言動も笑ってやり過ごせるぐらいの心のスペースを。

 

そして、自分の心に十分な余裕が出来たと感じたら。その時点で初めて、家族や友達、道で出会った知らない人達にも、その余裕をシェアしていこう。きっと、優しい気持ちを伝播していくことが出来るはず^^